上野駅前皮膚科
皮膚科 小児皮膚科 アレルギー科
03-6284-2496
月曜から土曜まで毎日診療
休診日/日曜日・祝日
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アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者さんの多くはアトピー素因を持ちます。アトピー素因とは患者さんやその家族が気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎のいずれか、あるいは複数の疾患をもつまたはさまざまな物質に対して抗体を作りやすい体質といえます。
アトピー性皮膚炎は、乾燥し皮膚のバリア機能が低下し、炎症を起こしやすくなっている皮膚に、汗、ほこり、摩擦などの外からの刺激が加わって起こります。最近ではフィラグリン遺伝子の異常が指摘され皮膚のバリア機能の低下が指摘されています。
有症率としては報告によってかなりばらつきがありますが、小児で10~13%、20歳代で約10%、30歳代で約8%、40歳代で約4%と年齢とともに減少していく傾向があります。
日本皮膚科学会・日本アレルギー学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021の診断基準ですが
1 瘙痒(かゆいこと)
2 特徴的皮疹と分布
・皮疹は湿疹病変
急性病変:紅斑(赤い斑点)、湿潤性紅斑(じくじくした赤い斑点)、丘疹(ぶつぶ
つ)、漿液性丘疹、鱗屑(かさかさ)、痂皮(かさぶた)
慢性病変:浸潤性紅斑・苔癬化病変(皮膚がかたくなり厚くなる)、痒疹、鱗屑、痂皮
・分布(左右対側性)
好発部位:前額、眼囲、口周囲・口唇、耳介周囲、頸部、四肢関節部、体幹
乳児期:頭、顔にはじまりしばしば体幹、四肢に下降
幼小児期:頚部、四肢関節部の病変
思春期・成人期:上半身(頭、首、胸、背)に皮疹が強い傾向
3 慢性、反復性経過(しばしば新旧の皮疹が混在)
乳児では2か月以上、1歳以上では6か月以上を慢性とする。
1,2,3の項目を満たす時アトピー性皮膚炎と診断します。除外すべき診断(合併することはある)として、接触皮膚炎、手湿疹、脂漏性皮膚炎、皮膚リンパ腫、単純性痒疹、乾癬、疥癬、免疫不全による疾患、汗疹、膠原病(SLE、皮膚筋炎)、魚鱗癬、ネザートン症候群、皮脂欠乏性湿疹があげられており、特に非典型例の場合は皮膚科専門医への受診をお勧めします。
また診断の参考になる血液検査所見として血清総IgE値、血中好酸球数、特異的IgE抗体価、血清TARC値が挙げられます。
治療の最終目標は症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持することです。また、このレベルに到達しない場合でも、症状が軽微ないし軽度で、日常生活に支障をきたすような急な悪化が起こらない状態を維持することを目標とします。
治療方法は
①薬物療法
②皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア
③悪化因子の検索と対策
の3点が基本になります。
原因、悪化因子として食べ物、発汗、物理的刺激(衣類、大気の乾燥、毛髪、化粧品)、環境因子(ダニ、ハウスダスト、花粉、ペットの毛など)、細菌・真菌(かび)、接触抗原(外用薬など)、ストレス、掻破(かきむしること)など多岐にわたります。VIEWアレルギー39というダニ、ハウスダスト、各種食物など39種類のアレルゲンを一度に調べることができる検査があるので1度調べてみることをお勧めします。
乳児アトピー性皮膚炎は特に食物アレルギーを伴っていることがあるので、必要あれば検査をし、原因食物を除去します。発汗についてはシャワーなどで洗い流すことが症状の改善につながります。物理的刺激に関しては、刺激の少ない衣服を着用し、冬は加湿器を使用して室内の湿度を40~50%に保つとともに、保湿剤を使用します。化粧品ではクレンジング製品が問題となることがあります。
当院では敏感肌用化粧品として常盤薬品工業株式会社のNOVシリーズをおすすめしています。
環境因子(ダニ、ハウスダスト、花粉、ペットの毛など)に関しては
花粉対策→花粉症
湿気をためないように換気(湿度70%以下)、窓サッシの結露をふき取る、クロス張りの壁、ソファを避ける、空気清浄機の設置、防ダニカバーの装着、干した後は掃除機がけ、カーペット、畳を避ける、ホコリの舞い上がりやすいフローリングなどでは、室内アレルゲンが床に落ち着く朝のうちに、濡れ拭き掃除の後に掃除機をかける(1㎡あたり20秒以上でゆっくりと掃除機がけ)、ペットは飼わないなどに気を付けます。
細菌・真菌(かび)に関しては感染症状がなければ入浴、シャワーなどにより皮膚を清潔に保つことを基本とします。
外用薬などによるアレルギー性接触皮膚炎が疑われた場合はパッチテストで原因物質を明らかにし、中止します。
規則正しい生活をおくり、暴食、暴飲を避けストレスをためないことも大切です。
皮膚の乾燥や軽微な物理的刺激が掻破につながるため、保湿剤や皮膚の被覆による刺激からの保護が有用です。
アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能と保湿因子の低下により、外来抗原が侵入しやすくなり、経皮感作が起こると考えられています。多くの場合皮膚が乾燥し、特徴的なドライスキンとなります。そのためスキンケアとしてシャワーや入浴などによる皮膚の洗浄、保湿剤の塗布が大切です。
実際には以下のことが大切です。
毎日の入浴、シャワー
・石鹸、シャンプーを泡立てネットなどを使いよく泡立てます
・素手で優しく洗います
・泡が残らないように、ぬるま湯でよくすすぎます
・お湯の温度は38~40℃が適温
・石鹸、シャンプーを使用する時は洗浄力の強いものは避けます
・入浴後にほてりを感じさせる沐浴剤、入浴剤は避けてください
保湿
・入浴後に保湿します
・患者さんの肌状態にあった白色ワセリンやヘパリン類似物質含有の保湿剤などを
外用します
・保湿剤は1日1~3回程度外用します
・保湿剤を塗る前に手をよく洗ってください
・塗る量の目安ですが、軟膏、クリームは人差し指の先から第一関節までの量で、ロー
ションは1円玉大の大きさでおよそ成人の手のひら2枚分の面積に塗れます。
・春・夏は、さっぱりしたローションが、乾燥する秋・冬は、油分を多く含んだ軟膏や
クリームがいいです。
その他
・室内を清潔にし、適温、適湿を保ちます
・新しい肌着は使用前に水洗いします
・洗剤はできれば界面活性剤の含有量の少ないものを使用し、十分にすすぎます。
・爪を短く切り、なるべくかかないようにします(手袋や包帯による保護が有用なことが
あります)
薬物療法
(1)抗炎症外用薬
保湿剤を中心としたスキンケアが大事ですがそれだけでは炎症が治まらないことも多く、そういう場合は現時点において、アトピー性皮膚炎の炎症を十分に鎮静するための薬剤で、有効性と安全性が多くの臨床研究で検討されている外用薬は、ステロイド外用薬(5段階の強さがあり、皮膚症状の程度、部位、年齢に応じて使い分けます)、タクロリムス(商品名プロトピック)軟膏(カルシニューリン阻害外用薬)、デルゴシチニブ(商品名コレクチム)軟膏(JAK阻害外用薬)があります。以前はステロイドやタクロリムス外用剤は痒み、赤みがある間だけ塗るリアクティブ療法という治療が主流でしたが、再発を繰り返すことが多く、一見治ったように見える部分も顕微鏡で見るとまだ炎症が残っていることが多いことがわかってきており、最近は再発を繰り返すような場所には症状がおさまっても週に2回程度抗炎症外用剤を塗布するなどのプロアクティブ療法がよく行われます。
(2)抗ヒスタミン薬
また痒みが強いときは抗ヒスタミン剤の内服を補助的に行います。
(3)シクロスポリン
シクロスポリン(商品名ネオーラル)は16歳以上で最重症の患者さんに限定して使用します。
(4)ステロイド内服薬
経験的に有効ですが、長期間のステロイド内服には種々の重篤な全身性副作用があることから、ステロイド内服薬によってアトピー性皮膚炎を長期間コントロールする治療法は一般的に推奨されず、投与するとしても短期間にとどめるべきです。
(5)漢方薬
漢方薬はあくまで補助的な治療になります。
(6)JAK阻害内服薬(バリシチニブ(商品名オルミエント)、ウパダシチニブ(商品名リンヴォック))
免疫をつかさどる細胞の中にあるJAKという部分に結合して、痒みの原因となる炎症性サイトカインが過剰に作り出されるのを防ぎます。効果は高いですが肺結核などのリスクがあるので当院では行っていません。
(7)デュピルマブ(商品名デュピクセント)
2018年に発売になりました。IL-4、IL13というサイトカインの働きを直接抑えることで、皮膚の2型炎症反応(Th2細胞による炎症)を抑制する新しいタイプのお薬です。効果は高い薬ですが費用が高いのが難点です。また、外用薬で効果がない方など一部の方のみの適応となります。
その他の治療として、紫外線療法が補助的に用いられます。また、アロエ、温泉、馬油、椿油、はりなどを用いた様々な民間療法がありますが、医学的根拠に乏しくとてもひどくなってから皮膚科を受診する方もいるので、民間療法を始める前に皮膚科を受診することをお勧めします。また乳酸菌摂取などのプロバイオティクスに関してはまだアトピー性皮膚炎の予防、治療に実用化できる医学的根拠がありません。
アトピー性皮膚炎の合併症としてアレルギー疾患、皮膚感染症、眼科的疾患が挙げられます。乳児のアトピー性皮膚炎は自然に治ることも多く、治療でいい皮膚状態が保たれるとその可能性が上がると言われています。乳幼児期に湿疹がひどいと皮膚から食物やダニなどアレルギーの原因物質が吸収され、感作されると言われています。すなわち食物アレルギーなどの他のアレルギー疾患にならないようにするためにも湿疹病変の治療が大切になってきます。皮膚感染症としては伝染性膿痂疹、伝染性軟属腫、カポジ水痘様発疹症などがあり、適切な治療が大事になってきます。また白内障や網膜剥離などの重篤な眼合併症も重症なアトピー性皮膚炎には起こりうるため、目の周りの皮疹を適切に治療し、眼の症状については早めに眼科を受診する必要があります。
ステロイド外用剤の副作用についてよく質問を受けますが、よく勘違いされているのが、ステロイド外用剤を使用すると、色が黒く残ってしまうというものですがこれは正しくなく、使用したから黒くなるのではありません。炎症のあとが一時的に黒くなることもありますが時間がたてば薄くなります。ステロイド外用剤は用法、用量通り医師の指示に従って使用すれば特に怖い薬ではありません。
詳しくはステロイド外用剤について