掌蹠膿疱症

手のひらや足の裏に、左右対称性にうみ(膿疱)が繰り返しできる皮膚の病気です。膿疱とともに紅い斑点(紅斑)や鱗屑と呼ばれるかささかさしたふけの様なものがあらわれます。その他にみずぶくれ(小水疱)、かゆみ、爪の変形、かさぶたなどの症状がでます。手足以外に膝などに見られることもあります。
また皮膚以外に、鎖骨を中心に骨や関節などが痛くなる方もいて、掌蹠膿疱症性骨関節炎と呼ばれます。
病気の原因としては扁桃炎、虫歯、副鼻腔炎、中耳炎などの病巣感染や、歯科金属などの金属アレルギーが関係していることもありますが、はっきりとした原因は現在のところ分かっていません。
掌蹠膿疱症診療の手引き2022では、診断のための主要項目に乾癬、接触皮膚炎、汗疱・異汗性湿疹、手・足白癬、好酸球性膿疱性毛包炎や菌状息肉症を除外できることとあり、これらの疾患の診断ができる皮膚科専門医への受診をおすすめします。

治療としては生活の改善と悪化因子の除去、症状に対する治療が行われます。
・禁煙
掌蹠膿疱症患者さんの70~90%程はタバコを吸う習慣があり、また、喫煙量が増えると掌蹠膿疱症の症状が悪化することが分かっています。
喫煙を続けると、治療の効果を得にくくなるとの報告もあります。
禁煙によりかなり改善が見込めることも多く、禁煙に取り組むことが重要です。
・口腔ケア
歯周炎や根尖膿瘍(歯の根元の炎症)などの慢性の感染症が、掌蹠膿疱症の発症と悪化に関わっていると考えられており、歯や歯肉、歯根の炎症を治療することで、掌蹠膿疱症の症状が改善することが分かっています。
症状がない状態でも発症や悪化に関わるため、見過ごされてしまうことがあります。
まずは歯周炎や虫歯の治療を完了させましょう。日頃の口腔ケアをしっかり行って口腔環境を整えること、定期的に歯科検診を受けることも大切です。
・扁桃炎や副鼻腔炎などの治療
扁桃炎や副鼻腔炎などが疑われる場合は、掌蹠膿疱症の発症と悪化に関わっている可能性があるため、これらの治療も併せて行います。
痛みや腫れなどの症状がなく、本来は治療の必要がない状態でも発症や悪化に関わるため、患者さん自身が気づきにくく、見過ごされてしまうことがあります。
治療を行っても、掌蹠膿疱症が改善するまでに時間がかかることがあります。
風邪などの感染症にも普段から注意しましょう。
・その他
歯性病巣感染治療を行っても症状が改善しない場合、歯の治療で使われる金属などの金属アレルギーが掌蹠膿疱症の発症や悪化に関与しているとの報告があります。しかしながら、実際には治療への影響も含め、詳しいことはわかっていません。
症状に対する治療は、塗り薬、飲み薬、注射剤(生物学的製剤)、光線療法があります。
塗り薬はステロイド外用薬、ビタミンD₃外用薬のほか、保湿剤が用いられます。
・ビタミンD₃外用薬
皮膚が形成される過程の異常を正常にするお薬です。また膿疱や水疱を抑える効果もあります。
・ステロイド外用薬
主に炎症を抑えるお薬です。
飲み薬はPOE4阻害剤、レチノイド製剤、免疫抑制剤、抗菌薬、ステロイド内服薬などが使用されます。
・POE4阻害剤
免疫バランスの乱れを整え、全身性の炎症を抑えるお薬です。
・レチノイド製剤
主に皮膚の過剰な増殖を抑えるお薬です。
・免疫抑制剤
過剰になった免疫反応を抑えるお薬です。
保険適応外であり当院では処方しておりません。
・抗菌薬
抗菌作用があるお薬で、病巣感染が疑われるときに使用されます。
・ステロイド内服薬
掌蹠膿疱症性骨関節炎の急性の痛みに対して使用されることがあります(皮疹のみの場合は使用されません)
・注射剤(生物学的製剤)
当院では行っておらず大学病院へ紹介となります。
最近やウイルスなどの病原体に対する防御反応(炎症)を引き起こす特定の物質の働きを抑える薬です。
・光線療法
当院では行っておりません。治療用の紫外線には免疫の働きを抑える作用があります。症状のある部位に照射することで、過剰になった炎症を抑える効果が期待されます。症状が落ち着くまでは1週間に1~2回ほどの頻度で照射を続ける必要があります。

日常生活のアドバイス

生活習慣を整えましょう
掌蹠膿疱症には、免疫バランスの乱れによる全身性の炎症が関与していると考えられています。
・栄養バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠を意識した健康的な生活習慣を心がけましょう。
・腸内環境の乱れによる炎症の関与も疑われているため、腸内環境を整えることも大切です。
・感冒などの感染症で悪化する場合もありますので、手洗い・うがいなどで予防しましょう。
皮膚症状をかきこわさないようにしましょう
・皮膚症状がある部分をかきこわしたりめくったりすると、その刺激により症状が悪化する恐れがあります。
・塗り薬による治療に加えて、保湿もしっかり行い、皮膚症状やかゆみを抑えましょう。
・塗り薬を塗った後に、チューブ型の包帯や手袋をつけて保護することも効果的です。
ストレスをためないようにしましょう
・過度なストレスが、免疫バランスの乱れと全身性の炎症、さらには症状の悪化につながる可能性があります。
・適度な運動や趣味などで気分転換し、ストレスをためないように工夫しましょう。
定期的に歯科検診を受けましょう
・歯周炎などの歯や歯肉、歯根の炎症を治療することで、掌蹠膿疱症が改善することがわかっています。日頃の口腔ケアをしっかり行い、口腔環境を整えましょう。
関節の痛み、喉の渇き、疲れやすい、動機や息切れなどの症状があれば受診しょうましょう
・皮膚症状以外にも合併することのある、関節の痛みなどが現れた場合は、早めに医師に相談しましょう。
・糖尿病、脂質異常症、高血圧、甲状腺炎を併発している場合、治療に影響を及ぼすと言われています。
・喉の渇き、疲れやすい、動悸や息切れなどの症状があれば、医師に相談のうえ、検査を受けましょう。