花粉皮膚炎

花粉皮膚炎は花粉が皮膚に接触することで生じる皮膚炎で、顔面、特に眼の周囲、頸部に生じることが多く、かゆみを伴う蕁麻疹様の赤みの強い浮腫性紅斑を特徴とします。スギ花粉皮膚炎は春先に生じ、ほかの季節には生じないことも特徴です。アトピー性皮膚炎を基礎疾患に持つ患者さんが多いです。アトピー性皮膚炎の3割の方がスギ花粉によって悪化すると考えられています。女性に多いことから、化粧落としや洗顔によるバリア障害が関与していると考えられます。春に飛散するスギやヒノキの花粉だけでなく、夏から秋にかけて飛散するブタクサやヨモギなどの花粉によっても発症します。
 スギ花粉症(鼻炎、結膜炎など)を伴うことが多いですが、伴わないこともあります。スギ花粉症を疑った場合は下記のアレルギー検査を行います。
・スギRAST:スギ抗原に対する特異的IgE抗体価が高値
・スギスクラッチテスト、スギスクラッチパッチテスト(両方とも当院では行っていません)
 対症療法として抗ヒスタミン薬内服といった花粉症そのものの治療が必要です。また、炎症の強い皮膚炎では中程度までのステロイド外用薬、タクロリムス軟膏を外用して炎症を抑える、炎症が抑えられた後は白色ワセリンやヘパリン類似物質含有製剤などの保湿剤を外用して、角層のバリアを保持することが重要です。皮膚の乾燥や過度の摩擦(あかすり、ナイロンタオルの使用など)、石鹸やシャンプーの使い過ぎによって角層のバリアが障害されると花粉が角層のバリアを通過しやすくなり、症状を発症しやすくなるため、スキンケアによる保湿が重要です。
外出時は、マスク、マフラーなどでスギ花粉が直接皮膚に接触しないようにし、帰宅時は花粉を自宅に持ち込まないような工夫やよく顔、首などシャワー浴でスギ抗原を洗い流すことも大切です。また、直接皮膚に触れるシーツ、下着、服は屋内に干すようにします。重症例では、スギ花粉のシーズン前に予防的に抗アレルギー薬を内服すると有効なこともあります。